蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
数歩進んだところで、中條さんが振り返る。
「花澄さん、話はまだ終わっていませんから。続きはまた時間のある時にでも」
凛とした声でそれだけ告げて、彼は自分を取り囲んでいた女性社員たちからひとり抜け出していく。
振り返らず進んでいく姿勢の良い背中をぼんやり見つめながら、再び彼に問われたとき私はなんて答えるのだろうかと、そんなことを考えた。
+ + +
中條さんの言った“続き”は想像していたよりも早くやって来た。
自分の部屋を出て、急ぎ足で階段を降り、そのままばたばたと玄関に向かっていくと、リビングから廊下へ母が顔を出した
「花澄、どこかに行くの? 夕飯は?」
「ちょっと出かけてくる。ごめん、ご飯はいらない。行ってきます!」
慌てて靴を履いてから、悲しそうな顔をしている母に向かって両手を合わせ、私は慌てて家を飛び出した。
仕事を終え帰宅し、そして自室でまったりしている所で、中條さんから電話が来たのだ。
彼は私に今夜の予定がないことを確認すると、「今から迎えに行きます。十分ほどで到着の予定ですので、準備しておいてください」とだけ言って電話を切ったのだ。