蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
水岡先輩はつまらなさそうな顔で私を見た。
「そりゃ出来れば手放したくないよね? 君が俺の所に来ちゃったら、今までの努力が水の泡になってしまうかもしれないのに」
何が言いたいのかわからなかった。
それなのに、彼の声から重苦しいほどの苛立ちや怒りが伝わってきて、一気に心に圧し掛かってくる。
私の顔を見て、また水岡先輩がおかしそうに笑う。
「花澄ちゃんは昔とちっとも変わらないなぁ。大切に育てられてきたお嬢様。純粋というか、世間知らずっていうか」
侮るような口調でそんなことを言われてしまえば、こちらも不愉快になってしまう。
「馬鹿にしないでください!」
むきになって言い返せば、水岡先輩が憐れむような表情を浮かべ、首を横に振った。
「馬鹿になんかしてない。俺は呆れてるんだよ。君の彼氏は、花澄ちゃんが倉渕社長の娘だから大切にしているだけだよ……いや。自分は大切にされていると花澄ちゃんに思わせるために、甘い言葉を吐いているだけ」
言葉の衝撃に、私はほんの少し怯んでしまう。
「呆れるのは私の方です。中條さんが何のために、私にそんなことを?」