蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
確かに中條さんは、仕事上、父や兄と近い人ではあるけれど、私に優しくしてくれた裏側に損得勘定が働いているとは思えなかった。
水岡先輩の言葉に納得がいかなくて苛立ちを込めた眼差しを向けると、また彼がふふっと耳障りな笑い声を発する。
「俺も彼と同じだから、分かるんだよ」
ざわりと肌が粟立った。その先は聞きたくないのに、手で耳を塞ぐことも、この場から逃げだすことも出来なかった。
動揺しすぎで心と体がうまく連動してくれない。足が地面に縫い留められたかのように動けない。
「花澄ちゃんがうちで働くことになれば、もしくは俺に惚れ込んでくれたら、倉渕物産の社長と強い繋がりを持つことが出来るかなって。俺は自分の会社を大きくするために、どうしても花澄ちゃんが……倉渕物産の社長の娘である君が必要だった。だってそうだろ? 君の価値は、社長の娘っていうことだけなんだから」
鋭利なもので、胸を突き刺されたような気がした。
身体の中にじわりと鈍い痛みが広がっていく。とっても痛くて、悲しくて、苦しくて、涙で視界が滲んでいく。
言葉の闇にのみ込まれないよう握りしめた手が、震えている。