蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
「ねぇ、お兄ちゃん。中條さんってお付き合いしてる人っている?」
「……は?」
気になって気になって仕方がなかったことを問いかけると、兄が面食らったように口を半開きにさせた。
「まさか、お前がふて腐れてる理由はそれか?」
疑問に疑問で返されてしまっただけでなく、兄の口元は半開きから半笑いへと変わっていく。
何も答えたくなくてそっぽを向いた時、この狭い通りに車が一台入ってきた。
狭いと言っても、道幅は車がすれ違えるくらいの余裕はあるけれど、兄の車は道の真ん中に停めてしまっている上に、運転手も車から離れている状態だ。
確実に相手の迷惑となっているのに、なぜか兄は近づいてきた車をじっと見つめたまま、車に戻ろうとしなかった。
「お兄ちゃん、車が邪魔になってるよ」
「……そうだな。俺は邪魔だな」
兄は笑みを浮かべてから、やっと自分の車へ戻っていく。
そして運転席のドアの横で足を止めると、ヘッドライトから車幅灯へと明かりを落としたその車に向かって顎をしゃくる。
「花澄、その話は俺じゃなくて本人に聞け。その方が佳一郎も嬉しいだろ」
まさかと思うと同時に停車した車の運転席のドアが開き、そこから長身の男性が出てきた。