蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
「花澄、お前、なんで電話に出ない」
開かれた窓の向こうから、兄が不満たっぷりの眼差しで私を睨みつけてくる。
「……ご、ごめんなさい。いろいろ思うことがありまして」
「なんだよ。何かあったのか?」
「ごめんなさい。それもちょっと」
言葉を濁しつつ、逃げ腰になる。
一刻も早く兄から離れたくてじりじりと後ずさりしていると、兄の手がシフトレバーをパーキングに入れたのが見えた。
車から出てきた兄は私の目の前に立ち、ムッとしながら腕を組む。私はもう逃げられないと項垂れた。
「お前今まで何してたんだよ。誰といた」
「それは……お兄ちゃんには関係ないでしょ!」
「言いたくないなら無理には聞かないけど……佳一郎が必死にお前のことを探してる。ものすごく心配してるみたいだから、今すぐ自分から連絡入れろ」
何度も電話がかかってきていたから、中條さんが私のことを心配してくれていることはちゃんと分かっている。
けど今は……まだ女性といるかもしれないのに、電話なんかしたくない。
「今すぐは無理。でも明日はちゃんと向き合うから」
兄は私の言葉に納得する様子もなく、ぶつぶつと「なんで明日なんだよ」と呟いた。