結婚のその先に
ぐっと唇を噛み締める。

「立川。」
それまでとはうってかわって優しい口調で啓吾は翠に話しかける。

「俺を信じられないか?」
「……。」
「俺だって背負うものの大きさに怖くて逃げ出したくなるときがある。」
栞菜の心にその言葉が突き刺さる。

「でもだからこそ慎重に調べているつもりだし、予測も立ててる。そこに足りないものがあれば自力で掴めるようにしてきた。」
翠の目から大粒の涙がこぼれる。

「その上で俺は確信してるんだ。この経営合体は利益になる。絶対に。」
啓吾はまっすぐに翠を見つめる。

「信じてついてきてほしい。社員として。」
翠も啓吾を見つめる。
< 196 / 279 >

この作品をシェア

pagetop