SKETCH BOOK
親子。
その言葉にドキリとした。
親子かぁ。
戸籍上親子じゃなくなっても、
あたしのお父さんだもんね。
橙輝のいう事も一理ある。
だけど、怖い。
もし新しい家族がいたら?
もし拒絶されてしまったら?
そう思うと、怖い。
携帯電話を握りしめて
きゅっと目を瞑ると、
携帯を持った手に、
温かいものが触れた。
目を開けると、それは橙輝の手だった。
「俺がついててやるから、頑張れ」
「う、うん……」
携帯電話の画面をじっと見つめ、
深く深呼吸する。
不思議と橙輝の言葉が
あたしの心を軽くさせた。
ゆっくり、ゆっくりと、
見慣れた番号を打ち出していく。
プルルルっと呼び出しのコール音が
耳に響いた。
四コール、五コール、
その機械音をひたすら耳に流していく。
七コール目で、プツっと音が途切れた。
「…………梓か?」
聞き慣れた低い声に、
はっと息をのんだ。
繋がった。
あんなに話したいと思っていた
お父さんと、繋がれた。
それと同時に、
あの日の言葉が頭を過った。
『お父さんなんて大嫌い!』
最後の言葉を思い出す。
頭の中に響く自分の声に、
思わず唇が震えた。