SKETCH BOOK




お父さんの言葉に、
心臓がドクンと跳ねる。


お父さんは別れてもなお、
お母さんのことを想ってくれているんだ。


それと同じように、
あたしのことも……。


お父さんは今でも
あたしたちを想ったまま、


一人で頑張り続けているんだろうか。


一人ぼっちで、
仕事に疲れて帰ってきても、


家には誰もいなくて。そんな生活で、
あたしたちのことを考えてくれていたなんて
知らなかった。


ずっと、誤解していた。


お父さんはもう、あたしのことなんて
興味ないのかと思っていた。


それなのに、実際に聞こえた
お父さんの言葉は違っていた。


それがとても嬉しくて、しょうがなかった。



「また、電話してもいい?」


「もちろんだ。お母さんが
 再婚することは聞いたよ。でも、
 だからって梓が気にすることじゃない」


「えっ?」


「いつでも電話してきなさい。
 お父さんは、いつでも梓の味方だから」










電話を切って、しばらくぼうっとする。


お父さんの言葉をもう一度頭の中で繰り返す。


そういえば、ごめんねって言えなかった。


今度の時はちゃんと謝ろう。


そう決意して目を閉じた。






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