あなたの命、課金しますか?


イジメというものは、どこか秘密裏に行われるものなのに__。


「うわ、ブスがうつる‼︎」


廊下ですれ違いざま、柴田さんとその取り巻きが大袈裟に顔をしかめる。


「ブスはおとなしくゴリラと後尾しろよ‼︎」


教室内でもお構いなしだ。


ただ、裕也が居ない時に限ってのことだが。


「気にしなくていいよ」と桃子が励ますと__。


「ブス同士、なに慰め合ってんだよ‼︎きもっ!」


「ちょっと‼︎」


思わず私は立ち上がった。


「渚、ほっときなって。怒ったら負けだよ」


桃子に腕を引っ張られ、渋々、椅子に座った私を嫌らしく嘲笑う笑い声。


同じグループでも、京子たちは我関せずだ。


他のクラスメイトもそうだが、どこか仕方がないという流れがある。


こんなブスな私が裕也と付き合えるのだから、それくらいのやっかみは受けるべきだという、雰囲気。


唯一、桃子だけが親身に声を掛けてくれる。


だからこそ余計に、桃子が巻き込まれるのは許せない。


私はいい。


自分のことだけなら我慢できたが、大切な友達の陰口は聞き流すことができないんだ。


一度は捨てた【友達】だが。


でも、捨てたからこそ大切さが分かったのもある。


以前の私なら、陰口を囁かれたら貝になって心を閉ざしただけ。


それが今は、食ってかかろうとしている。


私は変わった。


心が、変わったんだ。



< 188 / 279 >

この作品をシェア

pagetop