あなたの命、課金しますか?


__えっ⁉︎


どうして?


どうして裕也がまだ居るの?


消したはず。


【20年】を費やして消し去ったはずなのに__?


間違いなく願い事は遂行された。


その証拠に私の寿命はあと【06:52】だ。着実に減っている。


「渚、真っ青だよ?」


桃子が心配そうに顔を覗き込んでくる。


答えられない私は、ゆっくりと近づいてくる三鷹裕也を瞬きもせずに見つめていた。


「具合でも悪いのか?保健室にでも行くか?」


「__だ、大丈夫」


掠れた声で返事をする。


ひょっとしたら、恋人関係だけでも消え失せているかと思ったが、裕也が私を見る目と、気遣う言葉で、未だ付き合いは継続しているのだと悟った。


まだ、願い事は叶えられていない。


そんなことって、ある?


これじゃ、私が死ぬのが先かもしれない。


せっかく20年を払って、安息の日を手に入れたと思ったのに、意味がないじゃないか‼︎


どうしよう。


どうしよう。


私は教室を見回した。


ほぼ全員、アプリに登録してある。


その気になれば、寿命など奪い放題なのだが__。


ダメだ。


できない。


なんの恨みもない無関係なクラスメイトの命を奪うなんてこと、できない。



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