あなたの命、課金しますか?


それでも叶えることのできる願い事は、1日につき1つだけ。


鏡の中の自分を眺めながら、私は吟味する。


やっぱり次は【鼻】だ。


上を向いた団子っ鼻が、ずっと嫌だった。


これを高くすれば、もっと綺麗になるはず。


【鼻を高くする】【3年】


ためらいは何もない。


私は爪先でクリックする。


【願い事を承りました】


楽しみで楽しみで、なかなか寝付けなかったが、翌朝、目が覚めるとそっこーで鏡の前に飛び込んだ。


鼻が、スーッと高くなっていた。


それと同時に、目元が引っ張られて大きくなっている。


恐る恐る触っても、なんの違和感もない。


本来の整形のように、中にシリコンを入れて高くしたわけじゃないんだ。


元々、そうであったかのように、私は生まれ変わる。


何度でも何度でも。


回数を重ねるごとに綺麗になり、回数を重ねるごとに階段を着実に登っていく。


「おはよう、渚」


井沢さんに声を掛けられるのも、もう当たり前に感じられる。


戸惑っていた私は、もう居ない。


周りを見回しても、井沢さんたちグループの中で私が1番、綺麗なんじゃないか?


そろそろ、ここから巣立つ時がくるはず。





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