あなたの命、課金しますか?


その日、家に帰った私はスマホを手に固まっていた。


ここまでしても、まだ私は桜庭さんの眼中に居ない。


見下ろされてすれ違った時に、それが分かった。


でも、もう1つ分かったことがある。


どうすればいいか。


どうすれば桜庭さんを振り向かせることができるか。


それは簡単な話だ。


そう、見下ろされなければいい。


同じ目線、もしくは桜庭さんより高くなればいい。


私が155cmで、それに対して桜庭さんは170cmはある。


いくら私が痩せたとはいえ、それだけじゃダメだ。


握りしめていたスマホの画面を見る。


【10cm伸ばす】【10年】


これで完全に、追いつくはずだ。


でも__。


これまでのように、すぐにクリックできない自分がいた。


【10年】


一気に寿命を10年も差し出さなくてはならない。


はっきり数えてないが、これまでに結構な年数を引き換えにしたはず。


恐らく30年は軽く超えている。


もし本当に【課命】が残りの命を課すのなら、もう私に残された寿命はあまりないんじゃないか?


長く生きることを選ぶのか?


今を華やかに生きるのか?


答えは__決まっている。






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