あなたの命、課金しますか?


ここは雲の上だ。


下界とは空気の質が違った。


誰もが私たちを見上げている。虎視眈眈と、私を引きずり降ろそうと、つまり私を見つめて意識している。


常に注目を浴びているといってもいい。


「渚、また痩せた?ご飯ちゃんと食べてる?」


心配そうに訊いてくる読モの美奈は、ほぼサラダしか食べない。


体型維持に余念がなく、プロ根性を感じる。


「今度の休み、うちの別荘に泊まりに来ない?」


優衣が口にすると【別荘】も嫌味に聞こえないから驚きだ。


財閥のお嬢様である優衣は、持っているものもどれも一流だった。


そんなカースト上位の2人の、更に上に君臨するのが、桜庭朋美だ。


モデルでもなく、家がお金持ちでもないのに、桜庭さんが頂点に居座るにはワケがある。


【華】だ。


生まれ持った才能とでもいうのか、絶対的な華があった。


私たちが幾ら努力しても勝ち目のない、圧倒的な力。


「渚も行くでしょ?」


「えっ?あ、うん」


今でも時々、桜庭さんに話しかられるとポーっとしてしまうことがある。


私も努力は怠らない。


ここから弾き出されないよう、足を引っ張り降ろされないよう、毎日毎日【課命】している。


毎日、命と引き換えに華やかさを買っているんだ。


華麗なるスクールライフを送るために。



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