あなたの命、課金しますか?


私がふと思ったのは、別のこと。


物事でもなんでも、うまくいっていない時は何をしてもうまくいかない。


そういう時は、視点を変えるんだ。


「ねぇ、朋美」


私は桜庭さんに声を掛けた。


ようやく、下の名前を気軽に呼べるようになったんだ。


「なに?」


「悪いんだけど、三鷹くんと別れてくれない?」


なんて言えるわけがなく、代わりに私はスマホを差し出した。


朋美が画面を覗き込む。


「よかったらガチャガチャ、回してくれない?」


「なんか可愛いね。渚、こんなのやってるんだ?」


「うん、そこそこ面白いよ。でも自分で何度やってもハズレしか出てこないの。だから代わりにやってみてよ」


そう言って、スマホを押し出す。


桃子ともよくやっていた。


すると不思議なもので、物事の風向きが変わるのか、レアガチャが出ることも結構あった。


「私、クジ運悪いよー」


なんて言いながら、朋美は興味津々な様子。


綺麗に手入れされているツメが、画面を優しく叩く。


がちゃり。


ガチャが周り、カプセルが出てきた。


これまでの色とは異なった、妖しい光沢を放っている。


当たりだ。


でもそれは、朋美にとってのハズレになる。


つまり朋美は、本当にくじ運が悪かったんだ__。



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