イジワルな彼は私を溺愛しています
「有紀」

声のした方を見ると黒のオーラを纏った和海がいた。

……見なかったことにする。

「あの、水沢有紀です」

「有紀」

「ああ、俺は松田翔。翔先輩でいいよ」

「分かりました」

「有紀」

翔先輩との自己紹介をして何とか沈黙を回避する。また、チラリと和海を見るとバッチリ目があってしまった。

「カズ、なんでこの子連れてきたの?」

翔先輩は怪しい空気を感じ取ったらしく、明るく言った。

「ちょっと黙ってろ」

和海の一言で翔先輩は黙り込む。

「有紀、こっちに来い」

「………」

「有紀」

無視したらあとが怖い。

「……はい」

小さく返事をして和海の斜め前に行く。

「キスして」

「……はい?」

キスって………意味がわからない。

「俺のこと無視したお仕置き」

「そんなことで私のファーストキスはあげません」

さっきまで和海を怖いと思っていた自分が馬鹿みたいだ。

「ふーん」

チュ

リップ音がした。

「………っ!」

「ファーストキスをもらうってことで許してやるよ」

「………」

「どうした」

「………こ、この……馬鹿野郎!!!」

バチーン


私は和海の頬をひっぱたいた。
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