ツンデレ黒王子のわんこ姫
芽以が乗りたいと言ったボートライドは、一度にたくさんのゲストを乗せることができるので待ち時間は20分程度だった。
食事の時間が近いこともあり、朝早くから来ている家族連れは、フードコートやレストランに移動しているらしい。
「時間的にもすいててラッキーだったな。」
「何もかもが可愛くて、夢のようです」
"お前の方が可愛いよ"
そんな言葉が思い浮かんで、健琉はハッとした。
大きく左右に首を振ると、芽以にほだされている自分を即座に否定した。
「どうかしましたか?」
「いや、別に。」
「きつかったらどこかでお休みしましょうか?」
芽以が心配そうに顔を近づけてくる。
「大丈夫だって言ってんだろ」
健琉は顔を背けると、後ろにいたカップルのヒソヒソ話が耳に聞こえてくる。
「前にいる子めっちゃ可愛い。彼氏のこと心配してるし、我が儘ばっかり言うお前に、爪の垢煎じて飲ませてやりてー。」
「彼氏はうざそうにしてるじゃん。ぶりっ子してるだけで実は計算だって。」
チャラチャラした格好の二人は、喧嘩をしているのか、健琉と芽以をネタに言い合いを繰り返している。
「私だって、あんたみたいなチャラ男より、あの子の彼氏の方がいいって。声かけちゃおうかなー」
さっき並んでいる列が前へ移動する際にチラッと見たが、女は真っ赤なルージュにケバい付け爪をしていて、短いスカートに5cm位のヒールを履いている。
健琉の最も嫌いなタイプだ。
「じゃあ、カップル交替すっかな」
"冗談じゃない。勝手に喧嘩してろよ。俺たちを巻き込むな"
健琉は、今もパンフレットを夢中で読み込んでいる芽以をいとおしそうに見つめると
「芽以、もっとこっち来いよ。危ないだろ」
と、芽以の体を引き寄せ腰に手を回した。
「健琉さん、迷惑かけてごめんなさい。」
芽以は頬を赤くして、健琉を見上げる。
その様子に後ろのカップルが黙りこんだ。
男は羨ましそうに芽以を見つめる。
女は"ふんっ"と顔を背けた。
その様子を健琉はチラッと横目で見てほくそ笑む。
"どうだ、俺の芽以は可愛いだろう"
いつのまに"俺の芽以"になったのか?
自覚のないまま、アトラクションの列は、健琉を満足させて前へと進んでいった。
ボートに乗ると、有名な"小さな国"の音楽が流れ始めた。健琉と芽以が一番後ろになったので、運良くさっきのカップルとは別のボートになった。
「わあ可愛い!あのキャラクター知ってます」
この遊園地のキャラクターや世界の人形が、音楽に揺られながらゲストを出迎えるこのボートライドは、健琉も実は乗ったことはなかった。
この遊園地には高校の頃、男友達数人と来たことがあったが、絶叫系のアトラクションばかりに並んだ。
付き合った彼女も何人かいたが、みんな行きたがるのはショッピングとか、恋愛映画、おしゃれなバーなんかで、遊園地に行きたがるようなタイプはいなかった。
健琉にとって、このアトラクションは退屈だし決して面白味はなかったが、手放しで喜んでくれる芽以の様子を見ているだけで庇護欲が満たされていく。
"こいつの喜ぶ顔が見たい"
ボートライドが終了するまでの間中、健琉は人形ではなく芽以をずっと見続けていた。
食事の時間が近いこともあり、朝早くから来ている家族連れは、フードコートやレストランに移動しているらしい。
「時間的にもすいててラッキーだったな。」
「何もかもが可愛くて、夢のようです」
"お前の方が可愛いよ"
そんな言葉が思い浮かんで、健琉はハッとした。
大きく左右に首を振ると、芽以にほだされている自分を即座に否定した。
「どうかしましたか?」
「いや、別に。」
「きつかったらどこかでお休みしましょうか?」
芽以が心配そうに顔を近づけてくる。
「大丈夫だって言ってんだろ」
健琉は顔を背けると、後ろにいたカップルのヒソヒソ話が耳に聞こえてくる。
「前にいる子めっちゃ可愛い。彼氏のこと心配してるし、我が儘ばっかり言うお前に、爪の垢煎じて飲ませてやりてー。」
「彼氏はうざそうにしてるじゃん。ぶりっ子してるだけで実は計算だって。」
チャラチャラした格好の二人は、喧嘩をしているのか、健琉と芽以をネタに言い合いを繰り返している。
「私だって、あんたみたいなチャラ男より、あの子の彼氏の方がいいって。声かけちゃおうかなー」
さっき並んでいる列が前へ移動する際にチラッと見たが、女は真っ赤なルージュにケバい付け爪をしていて、短いスカートに5cm位のヒールを履いている。
健琉の最も嫌いなタイプだ。
「じゃあ、カップル交替すっかな」
"冗談じゃない。勝手に喧嘩してろよ。俺たちを巻き込むな"
健琉は、今もパンフレットを夢中で読み込んでいる芽以をいとおしそうに見つめると
「芽以、もっとこっち来いよ。危ないだろ」
と、芽以の体を引き寄せ腰に手を回した。
「健琉さん、迷惑かけてごめんなさい。」
芽以は頬を赤くして、健琉を見上げる。
その様子に後ろのカップルが黙りこんだ。
男は羨ましそうに芽以を見つめる。
女は"ふんっ"と顔を背けた。
その様子を健琉はチラッと横目で見てほくそ笑む。
"どうだ、俺の芽以は可愛いだろう"
いつのまに"俺の芽以"になったのか?
自覚のないまま、アトラクションの列は、健琉を満足させて前へと進んでいった。
ボートに乗ると、有名な"小さな国"の音楽が流れ始めた。健琉と芽以が一番後ろになったので、運良くさっきのカップルとは別のボートになった。
「わあ可愛い!あのキャラクター知ってます」
この遊園地のキャラクターや世界の人形が、音楽に揺られながらゲストを出迎えるこのボートライドは、健琉も実は乗ったことはなかった。
この遊園地には高校の頃、男友達数人と来たことがあったが、絶叫系のアトラクションばかりに並んだ。
付き合った彼女も何人かいたが、みんな行きたがるのはショッピングとか、恋愛映画、おしゃれなバーなんかで、遊園地に行きたがるようなタイプはいなかった。
健琉にとって、このアトラクションは退屈だし決して面白味はなかったが、手放しで喜んでくれる芽以の様子を見ているだけで庇護欲が満たされていく。
"こいつの喜ぶ顔が見たい"
ボートライドが終了するまでの間中、健琉は人形ではなく芽以をずっと見続けていた。