ツンデレ黒王子のわんこ姫
「芽以、ちょっと来なさい」

健琉のマンションから帰宅した芽以は、玄関に入り靴を脱いでいると、父である白木剣士に呼び止められた。

「はい。お父様」

芽以は父親に逆らったことは一度もない。

もちろん今後も逆らう気はなかった。

「座りなさい」

剣士に言われるがまま、リビングのソファに座る。

「いきなりだが、健琉くんとは上手くいっているか?」

剣士の言葉に、芽以は頬を赤らめて呟く。

「はい。式の準備も滞りなく済んで、後は当日を待つのみです」

笑顔の芽以とは正反対に、剣士の表情は固い。

「困ったことになった。この結婚、待ったをかけなければならないかもしれない」

「はっ?ど、どういうことですか?」

唖然とする芽以の前に、剣士は一枚の書状を差し出した。
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