ツンデレ黒王子のわんこ姫
22時。

芽以はそっと玄関を出ると、大通りに向かって歩きだした。

考えてみれば、満員電車で通勤したあの日以外、芽以は一人で家から移動したことはなかった。

常に誰かの保護下にいる現状。

「私って、どれだけ世間知らずだったのかしら」

ふぅー、と芽以はため息をついた。

社会人となって半年。

健琉と行動するようになって、公共機関の使い方や、旅行の仕方などを教えてもらった。

今もタクシーを呼ぶことができ、ネットで検索して、運良く、大分行きの夜行列車を予約することができた。

結婚まで後一週間しかないため、計画が上手くいかなければ、健琉にも黒田家にも迷惑をかけるかもしれない。

しかし、運良く結婚式当日までにやらなければならないことは片付いている。

明日の朝、剣士が自分のやろうとしていることが間違っていると気付いて、婚約破棄を考え直してほしい。

そう考えながら、芽以は迎えにきたタクシーに乗って行方をくらましてしまった。

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