ツンデレ黒王子のわんこ姫
「親父、明日から結婚式までは有給もらう。残務は葵生に任せたから」

自宅に帰り、荷物をまとめると、健琉は父親にそう言って家を飛び出した。

「何?どうした。健琉,,,こら、健琉!」

父親の呼びかけも無視して、健琉は電車に乗り九州に向かう。

ただ指を加えて日数を稼ぐわけにはいかない。

芽以は健琉の婚約者だ。

ワンコがご主人様の許可なしに家を出るなんて許せない。

いや、耐えられないのだ。

「なんでだよ、芽以」

従順で素直な芽以。自分の意志で家を出たのか?
それとも拐われたのか?

いずれにしろ、五日後に結婚式を控えていた幸せ一杯の健琉は、今、最も不幸な男に成り下がってしまっていた。

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