ツンデレ黒王子のわんこ姫
「この3日の間に、私は芽以さんに結婚の意思を再度確認しました。芽以さんも私との結婚を望んでくれています。二人の意思が一致している。すなわち、それだけでも婚姻は成立するんですよ」

健琉は自信満々に告げた。

「ああ、芽以が健琉くんを慕っているのはわかっている。だが、美術館には、先祖代々大切にしてきた骨董品や美術品がたくさんある。黒田には武道館の援助もしてもらっている手前、今以上に美術館の援助をしてもらうわけにはいかないんだよ」

「婚約が成立していない以上、桃山家が今、白木家に行っていることは恐喝に値します」

「婚約が成立しないのはわかった。だが、それを差し置いても、桃山が美術館の援助から撤退するのは自由だ。だからこそ、康友も靖国くんも強気でいるんだろう」

剣士はリビングの端に置かれた、鍵を掛けたショーケースの中に飾られている短刀を見つめて、ため息を繰り返した。

それは、代々白木家を守ってきた守り刀。

名匠が端正込めた逸品で、それだけでも歴史的価値がある。

「援助がなくても単独で乗り切る方法がありますよ」

「えっ、それはどういう,,,」

「お義父さん、今までのやり方ではこれまでの繰り返しです。今回を乗りきっても、美術館を狙う輩は蛆虫のように湧いて出てくる」

健琉は、ビジネスバッグからプレゼン資料を取り出した。

「単独で生き残る道を示すんです。援助の撤退はこの際、好機だと考えましょう」

どこまでも強気な健琉は、名を轟かせた名将のように自信に溢れていた。
< 82 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop