ツンデレ黒王子のわんこ姫
｢健琉さん、お帰りなさい｣

マンションに戻ると、芽以が玄関まで出迎えに来てくれた。

白いエプロンが良く似合う。

新妻らしく、可愛い出迎えに健琉は思わず微笑んだ。

｢この馬鹿。相手を確認しないで玄関を開けるんじゃねえよ｣

｢ごめんなさい｣

シュンとする芽以の頭を右腕で抱き込むと、健琉はネクタイに左手をかけた。

｢おっ、うまそうだな｣

ダイニングのテーブルには御馳走が並んでいる。

ずっと花嫁修業をさせられていた芽以の料理の腕前はプロ級だ。

｢今日は健琉さんの好きな牛の煮込みとお造りですよ｣

魚を捌けない女性も多いが、芽以に躊躇いはない。

彼女には家事全般で出来ないことの方が少ないのだ。

「予定よりも早く芽衣の食事を堪能できるなんて、その点だけは桃山に感謝だな」

料理を並べなから、芽衣が顔をしかめる。

「それはそうですけど，，，」

「それに，，，」

健琉は、芽衣の体を自分の方に向き直させるとその細い体をぎゅっと抱き締めた。

「いつでもこうして芽衣を抱き締めることができる」

真っ赤になる芽衣の唇を奪おうと顔を近づけた瞬間、芽衣のスマホの着信音が鳴った。

「あ、ラインの着信音です。早く確認しないと，，，」

「後でいい」

「でも、，，，」

「飼い主に歯向かう気か？従順なワンコのはずだろ？」

芽衣は戸惑った顔をしながらも、結局、健琉の思うままに唇を奪われるのであった。
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