ツンデレ黒王子のわんこ姫
「では予定通り、白木美術館の資金援助は撤退させていただく。他の支援者にも私と芽衣さんの婚約が成立しなければ、スポンサーから撤退すると言われていたので心苦しいですが」

靖国は、全く心苦しいとは思っていない様子でニヤリと笑う。

フレームレスの眼鏡の奥に見える瞳は爬虫類の様にギラギラしていた。

「では、そのように」

健琉は、持参したスポンサー契約白紙撤退書にサインするよう桃山康友に促した。

靖国の誘導に、白木サイドが動揺すると思っていた康友は、吃りながら言葉を繋いだ。

「ま、待て、本気なのか?白木、このままだと本気で破綻するぞ」

靖国と違って、康友には白木剣士への友情が残ってはいるようだ。

「芽衣を蔑ろにされたんだ。やむを得まい。最早、私は桃山家を信用することはできなくなった」

「チッ,,,」

靖国が舌打ちする声が聞こえる横で、康友は書類にサインをした。

「さあ、これで桃山家と白木家のしがらみはなくなった。もう二度と芽衣に近づかないで頂きたい」

「誰がそんな、お前の手垢のついた女など,,,。純粋培養で見かけ倒しの価値のない女などいらぬわ」

もう、取り繕うつもりもないのだろう、靖国の化けの皮が剥がれてしまっていた。
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