ツンデレ黒王子のわんこ姫
「そうそう、あなたが価値のないとおっしゃっているこちらの芽衣さんですが、この度、白木美術館の館長に就任しました」

「な、何だって?」

「彼女はマネーローダリングの才能があるようで、雲隠れしていたこの数日間で、貯蓄していた個人資産数百万を数千円に増やしたんですよ」

これは本当だ。

芽衣は、白木美術館の苦境をなんとか出来ないかと女子校の時代の友人に相談していた。

お嬢様ばかりの通う女子校だ。

芽衣を可愛がる友人に、ファンド系企業を運営する会社の令嬢はいくらでもいた。

その令嬢から父親へ、父親から敏腕営業マンへと話は進み、あっという間にネット取引が行われ、利益は瞬く間に倍増していたのだ。

電話で言われるがままに取引する芽衣は、騙しやすく、悪質な詐欺師にかかれば簡単に破産させられるだろうが、純粋で前向きな芽衣には協力者しかいないのが現実なのだ。

「ああ、それと、美術館ではゲーム会社やIT企業とコラボして、刀や甲冑の展示会、アニメの声優との握手会などのイベントを企画しています。一年先まで予定がつまっていて、これから忙しくなりそうですよ」

健琉の言葉に唖然とする康友に、苦虫を潰したような顔で睨む靖国。

「あなたのやろうとしていたことがヒントになり大変助かりました。それでは、失礼いたします。ああ、私と芽衣さんの結婚式には来ていただかなくて結構ですので、招待状は破棄してください。今までの白木美術館へのご支援には感謝します」

芽衣の手を取ると、健琉は振り向きもせずにそう言った。
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