甘い運命

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「えーっと、根拠になりませんかね?

確かに仕事に私情を挟むのは、あり得ないとは思うのですが、ちょっとそれ以外に心当たりがなくて。

取引先の人間を睨むとか、普通ないですよね。」

「…くくっ、よくある『女の世界』ってやつでしょ?
ホント怖いわー!!
そういうの聞くと、うちの嫁さんなんか可愛いもんだって思えるよ。」

…まだ笑ってるよこの人。くそう。他人事だと思って。

大体、奥さんの奈津美さんは、『器量よし、性格よし、料理上手』の三拍子揃った人だ。

あんな素敵な人に向かって、何てことを!!

「……まだ初期段階なんで、私の勘違いかもしれないし、伏せておいて下さいね。

あと、仕事なんで、変な難癖つけられても困るので、出来る限りの証拠は押さえておきたいんです。

あちらの会社にアポ取る時や連絡事項がある場合、誰かに立ち会ってもらって、証人になれるようにしてもらえると助かります。」

「…ふーん、何だか、対応慣れてるね。」

「男友達多いと、色々トラブルに巻き込まれるんですよ!
こんな私でも!!

恋愛経験値は低いですが、修羅場経験値は結構ありますよ。
最近は面倒くさくなって、彼女持ちの男友達とは連絡とりませんが。

話が逸れましたけど、まあ、記録を残したり証人を作るのは、いじめ対策で。
やっぱり証拠が一番です。」

ふう、と一息ついて、課長を見つめる。
課長は、ちょっと考えるように遠くを見ると、顎に手を当てた。

「…了解。こっちでも探れるかもしれないから、情報収集はしとくよ。
あそこは大口だし、会社としても変なことになるのは避けたい。

最悪、担当変えるかもしれないけど、大丈夫?」

ああ、言われるだろうと思ってた。
修一さんと仕事ができなくなるんだ……。
胸がズキッと痛んだ。

でも、最悪そうしないと、うちの会社にもだけど、修一さんに迷惑がかかる。
彼女だけかどうかわからないけど、私に対する妨害が、修一さんの仕事に悪影響を及ぼすのは必至だ。

「……それ私からもお願いしようと思ってました。
私的にはかなり痛いですけど、大事になると困るのは私ですしね。」

「そういうこと。俺はちゃんとお前も守ってんのよ?」

ニヤリ。悪い顔だ。恩を着せようとする気満々だ。

「わかりましたって。奈津美さんの大好きなイチゴのタルト、買ってきますから。」

「まじで?!うっわ、すげー喜ぶわアイツ。
そういや遊びに来いって言ってたぞ。」

「じゃ、近いうちにケーキ持って伺います。
お子さんたちの好きなケーキって……」

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