甘い運命

1-25

こうなることを見越して、もう準備はしてある。
後は山崎くんと直接引き継ぎをして、修一さんに紹介するだけだ。

──修一さんと、仕事できなくなるのか……。
思ったより、落ち込んでる私がいる。

ちょっと気分転換しよう。
私は会社の外に出て、近くの公園に向かった。
ちょっと大きめの公園で、適度に木が植えてあり、日陰がたくさんある。

課長に貰った缶コーヒーを片手に、公園のベンチに腰掛けた。

ウォーキングをするおばさまたちや、犬の散歩をする人の様子を眺めながら、缶コーヒーを開けて一口飲む。

湿った風が、頬を撫でる。
夜は、雨になるかもしれない。




色々問題がおきだしてからも、抱き枕は続いていた。

ただ、頻度が減って、金曜日か土曜日の、どちらか一回だ。
問題解決のために色々動いてくれているのと、仕事が忙しくなったのとで、あまり休めていなさそうだ。

無理はしてほしくない。一人で寝た方がゆっくりできるのでは?
そう言うと、「この時間だけが癒しだから。」と、私を強く抱き締めて眠る。

そんな修一さんを見ていると、胸がいっぱいになる。
でも、この気持ちは、要らないものだ。
あえて、何も考えないようにする。

違う。今考えていたのは、仕事のことだ。
とても勉強になる相手だったし、仕事でも人としても、信頼できる、尊敬できる相手だった。
一緒に仕事ができなくなるのが、残念なだけだ。


そこまで考えて、胸がズキンと痛んだ。
…ダメ。この痛みに、名前をつけてはいけない。

私は慌てて首を振って、思考を空に散らした──
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