甘い運命

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「雅人さん15分くらいで来るから。着替えるならホットタオル作るよ。」

岬の言葉に甘えてタオルで身体を拭くと、ちょっとスッキリした。外に出ても大丈夫な程度のチュニックとレギンスを身につけた頃に、雅人さんがやって来た。

岬と結婚して2年の、成瀬雅人さん。結婚しても相変わらず細身のイケメンさんだ。岬も私と似ず美人なので、お似合いの夫婦だ。

年は、修一さんと同じ32歳。年上の義弟だ。
二人には一人息子の唯人がいる。
私にとって、最大の癒し。天使ちゃんだ。

唯人はどうしたのか聞くと、雅人さんのご実家に預けたらしい。
申し訳ない。唯人、アホな伯母ちゃんでごめんね…。

雅人さんと岬に手を借りて、後部座席に乗った。
岬は私のバッグから保険証と財布と鍵とを見つけ出してくれて、一緒に後部座席へ。

それと同時に、私の私用携帯を押し付けられる。

うわぁ…死んでるな、これ。
そう言えば、スーツのポケットに入れてたんだった。
鞄の会社用は多分無事だろうけど…。
そりゃ、繋がらないはずだ。

「おねーちゃん、何がどうしてこうなった?」

「…雨に濡れたんだってば。」

「春雨の季節よりは暑いかも知れないけど!これは濡れすぎでしょ。
スーツぐっしょりだったよ?」

…怪しまれてる。ヤバい、熱があるし、かわせる自信がない。
私はだんまりを決め込む。
見かねた雅人さんが、口を挟んだ。

「岬、今はいいだろ?都ちゃん、熱あるんだし。」

「だって雅人さん、おかしいじゃない。おねーちゃんのキャラと違う。」

「だから、今はやめとけ。良くなってから聞け。
我慢できないなら、病院から帰って、都ちゃんがベッドに横になってからだ。」

岬は不満そうだけど、口をつぐんだ。
助かった、と思った頃に、病院に着いた。

すぐに診てもらうことができて、点滴を3本もする羽目になった。

終わる頃迎えに来るから、と、岬はうちの鍵を持って、処置室から出ていった。

汗がついたシーツを替えたり、洗濯をしたりしてくれるらしい。
持つべきものは、家庭的な妹だ。







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