甘い運命

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ふふ、と、笑いが出る。
昨日は絶望的な気持ちで眠ったのに。
岬のお陰で、強制的に気分転換させられた。

雅人さんと唯人にも感謝だ。
私には、助けてくれる義弟も、可愛い甥もいる。

自分に旦那さんになる人や、子どもがいないことが何だというのだろう。

点滴をされてうとうとしながら、修一さんと会う水曜日には、会う間だけでも、完璧に今まで通りの私でいようと決意した。

そして、『抱き枕』も、私から解消を申し入れよう。

自分の気持ちを自覚してしまった今、もうただの『抱き枕』にはなれない。
私にそういう気持ちを持たれたと思ったら、修一さんも引くだろうし。

それに修一さんからは、彼女が槙原さんだけに、言いにくいかも知れないから。

携帯も、いい機会だから、変えてしまおう。
これで、何も残らない。

修一さんの彼女に、1ミリも心配をさせてはいけない。

ショッピングモールでのじゃれ合いを、きっと見ていた槙原さん。
不安に思ってるだろう。

私自身も、姿を消せることが、今はありがたい。

会い続けていたら、とても苦しくなってしまうから。

自覚してしまった想いは、長くは隠しておけない。
良い友達の印象だけは、修一さん…三上さんに持っておいてもらいたい。

そのくらいは…いいよね?

今後の見通しが立って、少しだけ安堵した。
二本目の点滴が始まって、急激に眠気が襲ってくる。

──きっと、大丈夫。うまくいく。
眠りにつくまで、何度も何度も何度も、自分に言い聞かせていた───


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