甘い運命

1-46

「都……。」

心底安心したような、修一さんの声。

暫く私を抱き締めていたけど、あっ、と何かに気がついたような声をあげた。
何事かと見上げる私の頬に、修一さんが右手を添える。

「都、俺のものになってくれるよね?」

力のこもった、真剣な眼差しを向けて。

「都が好き。大好き。都がいないこれからなんて、廃人のように生きていくしかない。

都は俺を廃人にしたいの?」

「えっ、いやまさか、そんなことにはならないでしょう?
修一さん、選びたい放題じゃないですか?」

「まだわからないの?俺は、都の側でないと、俺自身でいられない。

都がいなくなるかもって思ったときに、息のしかたもわからなくなって、すごく苦しかった。

こんなこと、今までに経験したことがないんだ。
こんなに、一人の女に執着するなんて。
──都が、俺を変えてしまったんだよ。

なあ、都。どう言ったらわかってくれる?
この飢餓感を、どう説明したら伝わるんだろう。

モテようが、仕事で認められようが、都なしの人生なんて、俺には何の価値もないんだ。

都も俺のこと、嫌いじゃないだろ?
だったら、絶対惚れさせてみせる。

お願いだから、OKして?
全力で幸せにするから。」

必死さが伝わる口説き文句。
じっと私を見つめる、甘い眼差し。
腕に込められた力と、頬に添えられた手のひらの熱さ。



こんなに、こんなに真っ直ぐに気持ちをぶつけてきてくれる。

大人になってしまって、こんな無防備に他人とぶつかるのは、ものすごい恐怖の筈なのに、修一さんは、見せてくれている。

精一杯の、『気持ち』を。


──だから、私は。
────怖くても、精一杯、向き合わないといけない──


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