曇り、ときどき雨。君に、いつでも恋。



月曜日がやってきた。
 
中島くんと付き合ってからちょうど1週間。



夏祭りのときみたいに、
あたしより中島くんは早く来てた。



「よっ。」


「おはよう。」

おはよう、っていう時間じゃない気がするけど。
自分で自分にツッコミを入れてから、あたしは覚悟を決めた。



「中島くん、ほんとにごめん。


あのね、あたし、中島くんに告白されて好きって言ってもらえてすごく嬉しかったの。


そんなこと、今までなかったから。

中島くんのことは友達として好きだから。

それで、誰かと付き合うとか、そういうことに、すごく憧れてて、ちゃんと考えずにOKしちゃって。


ごめんなさい。


中島くんのことは、友達としかどうしても思えないことにあとから気づきました。


最低なことをしてるってことはわかってます。

ほんとに、ごめんなさい。

あたしと、別れてほしい、です。」


あたしは深く頭を下げた。

ほんとにごめんなさい。
こんな傷付けかたして、ごめんなさい。


「・・・顔、あげて。」


中島くんは、低くてかすれた声を出した。


ゆっくり顔をあげて中島くんを見ると、
ひどく傷ついた顔をしていた。


「夏祭りのとき、途中から様子が変だとは思ってたけど。


そういう、ことか。」


あたしは唇をぎゅっと噛み締めた。

ほんとにごめん。



もう、あたし、あのときなんで深く考えなかったんだろう?
浮かれて舞い上がってちゃんと考えなかった。

ほんとうに、最低。



「ごめんなさい。

ほんとうに、ごめんなさい。」



「・・・ショックだけど、


早く言ってくれたのは良かったわ。



恋愛経験ないならその気持ちはわからなくもないし。


ありがと、な。」



中島くん、なんでそんなに優しくするの?

あたしのこと、怒ってよ。
罵ってよ。


「そんな、優しくしないで、怒っていいよ。
あたしのこと。

最低だ、って言ってよ。」


あたしの言葉に、
中島くんは悲しそうに笑った。


「そんなこと、好きな子に言えるわけないじゃん。」



好きな子。
あたしの胸にその言葉が突き刺さる。


本気であたしのこと好きになってくれたのに。

ばか。あたしの、大ばか。
ほんとうに、ばか。



あたしがなにも言えないでいると、中島くんが続けた。


「早く言ってくれたから、良かった。


気にしなくて、いいから。



でも俺、佐藤さんのこと好きなのは変わらない。

佐藤さんに振り向いてもらえるように頑張るから。

これからも、今までみたいに仲良くしてほしい。」


中島くんのまっすぐな言葉がグサグサとあたしに突き刺さる。

あたしが中島くんを好きになれれば、傷つけなくて済むのに。

でも、今は好きになれない。
はっきり、そう思ったから中島くんの気持ちに応えられないのがすごく辛くて苦しかった。


友達としては好きなのに。

彼氏だと思うと、とたんにダメになる。



「・・・うん。


ありがとう。


ほんとうに、ごめんなさい。」


「謝るなって。


じゃ、体育祭委員がんばろうな。

また2学期な。」


中島くんはそう言いながら走っていった。


今、中島くんはどんな表情をしているんだろう?


きっと、ショックで顔を歪めてる。

それをああやって自分で隠して、あたしのことを許してくれる。



そんな人をあたしはこんな形で傷つけたなんて。


最低だ。

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