曇り、ときどき雨。君に、いつでも恋。
中島くんとの一件から1週間。
夏休みが半分終わった。
あたしはというと、ひたすらバイトに明け暮れていた。
中島くんとのことから、目を背けたくて。
現実逃避したくて。
そんなある日、ちょっとした事件が起こった。
「いらっしゃいませー。」
カランカランと、入店を知らせるベルが鳴って機械的にあたしは声を張り上げる。
テーブルへの案内をしようと思って、足が止まった。
そのお客さんが、
アイちゃんと田代くんだったから。
ふたりとも、制服を着てるから部活帰りかな。
どうしよう。
今まで、あたしの高校の人がこのレストランに来ることはたまにあったけど、知り合いが来ることはなくて。
あたしがもたもたしてると、近くにいたパートのおばさんが応対してくれていた。
本当にどうしよう。
事情を説明すれば、
アイちゃんならわかってくれると思うし、
気にしないようにするしかないか。
逆に、来たのが
そんなに話さないクラスメートじゃなくて
仲良しのアイちゃんで良かったって思わなきゃ。
前向きに考えて、オーダーはあたしが近くにいたらためらわずに行こうと決めた。
それからいくつかのテーブルでオーダーをとると、
【ピンポーン】
う。アイちゃんたちのテーブルだ。
近くに応対できそうな手の空いてる人はいない。
行かなきゃ。
ここでもたもたしてても今井さんに怒られるし!
あたしがぎゅっと拳を握って、
さあ行くぞと謎の気合いを入れて一歩踏み出したとき
すでにアイちゃんのテーブルにはオーダーをとっている人がいた。
・・・今井、さん。
あたしが、もたもたしてたからかな。
うわー。やらかした。
でも、そんなに時間食ってはないと思うんだけど。
ピンポーンって鳴ってから1分は絶対にたってない。
それに、
少しあたしがもたもたしてたくらいで今井さん自らこっちに来ることは珍しすぎると思う。
いつも、キッチンだから。
なんでだろう?
とりあえず、多分あとで怒られる。
はあ。
まあ、アイちゃんにバレるよりはいいかな。
と思って仕事を再開したけど、
アイちゃんたちは、20分くらいしてからまたピンポーンと押した。
デザートの注文かな。
今度こそ、行かなきゃ。
ってあれ?
また、今井さん?
なんで??
今はもたもたしてない!絶対にしてない!!
ほんとになんでだろう?
・・・もしかして、
あたしの思い上がりかもしれないけど、あたしと同じ制服着てるからあたしじゃ気まずくなると思って?
今までは、
あたしは同じ高校の人が来ても知らない人だったから
普通にしてたけど、
今日、あたしが動揺してたのがバレた?
それで、自分が代わりに?
いやー、それはないよ。うん。
バイト原則禁止って知ってるわけないし。
それに、あたし多分嫌われてるし。
嫌いな人のこと助けたりしないでしょ。
でも、こんなこと今まで無かった。
思い上がりだとは思うけど、
やっぱり、
あたしのことを助けてくれたとしか正直思えない。
なんで??