男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「ブルーニ公は曲者だが、陛下はどういうわけかお前を目に触れさせたくないようだ」
 

探るような目つきで見つめられ、ミシェルは居心地が悪くなり俯く。手にクロードのジュストコールを注意深く持っている。


「まあいい。じゃあな」
 
ヴァ―ノンは去って行った。

その後姿を見送り、ミシェルはクロードの私室の隣にある侍従部屋でアベルを待つことにした。



しばらくしてアベルが侍従部屋に入って来た。


「フランツ、食事にしよう」
 

侍女たちがアベルの後ろにいて、昼食を運んできた。


「はい」
 

ミシェルは侍女たちを手伝い、テーブルに食事を並べた。
 
侍女らが出て行き、食べ始める前にミシェルは口を開く。


「アベル侍従、どうして僕は陛下から上着を被せられたのでしょうか?」

「……私にはわからないよ。なぜなんだろうか」
 

本当のところ、アベルにはわかっていた。気に入ったミシェルをクロードはブルーニ公の目に触れさせたくなかったのだと。


「……そうですか」

そのことも気になるが、ブルーニ公と一緒にいた女性がミシェルの髪飾りを川に捨てた張本人だとわかり、心がモヤモヤしていた。


(あの女性は誰なんだろう……ブルーニ公の取り巻きであることは間違いない)


「さあ、早く食べて陛下の明日の服の用意をしよう」


物思いにふけってしまったミシェルにアベルは中断させるように急かした。



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