男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
第四章 ミシェルの決心
翌朝。

ミシェルはパスカルに破かれてしまったシャツをたたみ、その間に毒の入った瓶を入れ見られないように引き出しの中にしまう。


(侍従服のシャツがもう一枚あってよかった)
 

まだ折り目の付いたシャツに腕を通して上着を着る。鏡を見て髪からつま先まできちんとなっているか確認していると、控えめなノックの音がした。


「はい! 今行きます!」
 

ミシェルはブーツの踵の音をさせ扉に向かった。


「アベル侍従、おはようございます」

「おはよう。フランツ。おや、眠れなかったのかい? 目が赤い」
 

侍従としてほんの少しのことでも気のつくアベルはミシェルをひと目見て気づく。


「陛下からお借りした本を読んでいたら面白くて……」
 

鏡を見て自分の目が赤いのを知っていたミシェルは理由をちゃんと考えていた。


「そうかい。あの本を面白いと思えるのはいいことだよ」
 

アベルは顔を緩ませると歩き始める。


「はい。昨晩は大広間から素敵な曲が聴こえてきて、それに合わせて踊ったんですよ。でもアベル侍従、僕たちが社交ダンスを覚えてもそんな機会があるのでしょうか?」

「ま、まあ……知識として入れておくのは必要なことだよ」

「そうですよね。陛下のお側にいるのですから」
 
ミシェルはにっこり笑った。心の中は不安だらけだったが、その分元気なフリをする。


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