今夜、シンデレラを奪いに
真嶋の眉間に皺が寄る。確かめるまでもなく嫌そうだ。普通に考えて、会社の知り合いに誰かを紹介するなんて面倒なことはしたくないだろう。

だからこそ、斉藤さんの言葉に乗っかってみた。


「誰かいい人いない?そろそろ婚活とか考えなきゃいけないし」


偉そうにしてる真嶋が困る顔を見るのは楽しいのだ。彼にジャンクフードや駄菓子を食べさせるのが楽しいのと同じように。


「そこまで男に不自由してるとは知りませんでした」


例のごとく腹立つ事を言ってくるけど、これくらいはもう慣れた。それに、私にはまだ真嶋に反撃するカードが残されている。


「あんまり意地悪ばかり言うなら、あのことバラしちゃおっかなー」


真嶋が顔に似合わない貧乏舌を持ってるのは、今のところ私しか知らないはず。込み上げる笑いを隠すことなく真嶋に勝ち誇ってみせると、



彼はぴたっと固まった。驚いたことに真顔である。


「…………深刻な事態となります。どうか理性的な判断を」


「ぶっ」


こんなに焦っているのを見るのは初めてだ。あの程度のことをここまで気にするなんて、プライドの高い奴め。


「オープンにした方がかえって高感度上がると思うけどなぁ。人並みに可愛げがあって」


「あの状況を聞いていたのですから、普通は分かるでしょう。極秘のうちに調査しなければ意味が無いのです」


真嶋はジャンクフードの類いを食べるのを、極秘調査と呼んでいるのか。やばい、可愛すぎて吹き出しそうだ。



「何、なに?」と興味深々な斉藤さんに「実はですねー」と言うふりをすると、力ずくで口を押さえられる。必死な顔をして額には汗すら浮かんでる。



「ふももももっ」



「わかりました!

わかりましたからどうか内密に」



「ふももっ」



「男でも何でも紹介します。

……俺を恐喝するとは良い度胸ですね」



「ふも???」



斉藤さんは「あんまり後輩いじめんなよ!」と言って、次のアポイントがあるのかバタバタとオフィスを後にした。


そういえば誰か紹介してという話だったっけ。予想外に真嶋が焦っているのが面白くて、元の話題を忘れてた。


ジロッと睨まれてやっと口から手が離れる。


「言ったからにはきちんと紹介しますよ。

ただし、ひとつ条件があります。」
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