今夜、シンデレラを奪いに

8 嘘つきなシンデレラ

真嶋の無罪は私が証明してみせる。それを高柳さんにプレゼンするんだ。



そう決意してみたものの、何もわからずに情報を整理しているだけで毎日が過ぎていく。何度か真嶋に連絡を取ろうとしたけど、当然のように返答はないままだ。



真嶋は始めから仕事ができて、態度が大きくて、そして、何かを隠してた。


私は真嶋が残念なほどの貧乏舌を隠してるんだと勘違いしてたけど、あの時の真嶋の様子は尋常じゃなかった。


それに真嶋はトパーズロジスティクスとの契約を異様に嫌がっていた。あれは不正が発覚するきっかけになった契約。今にして思えば、真嶋が仕事を遅らせたのはあの時だけだ。


「絶対、何か知ってたんだよね。でも今のままじゃ不正に関わってないって証明できない…………」


突破口が掴めないまま日々だけが過ぎて、いつしかオフィスはがらんとしていた。みんな新しい配属先が決まって移ってしまったので、ここにいるのは高柳さんとの面談を拒否し続けている私だけだ。


「肝心な時に、どうして私はなんにもできないのよ……。」


無力な自分にイライラしながら、業務用のカレンダーを眺める。不正が発覚してから既に二週間が過ぎていた。


「今日は法定点検日だったんだ。だからやけに人が少ないんだ」


電機系統の設備点検があるため、7時には完全退社するように通知されている。前に会社に戻ったら真っ暗闇の中閉じ込められてエライことになって……



「!!!」


どうして忘れていたんだろう、あの人の存在を。


頭に大きな金ダライでも落ちてきたような衝撃を受けて、今までの自分の馬鹿さ加減に呆れる。


小さく身を縮めて、一縷の望みをかけて会議室の中に閉じ籠った。



あたりの照明が一つ一つ落ちていく。その度に心細くなりながらじっと待った。警備員が見回りに来た時も隠れてやり過ごした。


次第にあまりにも静かな暗い空間が広がって、だんだんと心細くなってくる。その度に真嶋のことを思い出して、気が遠くなるほど長い間じっと隠れていた。


耳に届くかどうかというほどの微かな物音を聞いたのは、そのずっと後のことだ。
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