今日から俺の彼女ね
第1章

転校生

窓側の一番後ろの席、





少女漫画とかでよく主人公が座っている席。







所謂主人公席。







私の席。










昨日までは私の隣の席はなかったけど、今日は机が置かれている。








転校生でも来るのだろうか。









教室は清々しいほどに朝日が差し込んでいる。







特に何か理由があるってわけではないけど、

私はいつも一番に学校に来る。







赤い縁のメガネ、真っ黒な髪を一つで結ぶ。




なんの取り柄もない、真面目な地味子ちゃん。





さらに私はコミュ障だから


大体2番目に来る人と話さないように、いつも寝たフリをしている。








今日も机に突っ伏して寝たフリをしていると、誰かが教室に入ってきた。







「よっしゃいちばーん!…ってあれ?
誰かいるし」




入ってきたのは男の人。


中々のイケボ。






そのまま寝たフリを続けていると、足音がだんだん大きくなった。





え、もしかしてこっちに来てる?






「すいませーん」







…私、だよね?




いや、私しかいないし。





「寝てるんですか?


邪魔しちゃ悪いな…」






どうする?寝たフリ続ける?

起きた方がいいのかな?






それにしてもイケボなんだけど!!!







「席ここでよかったかな?」





男は多分、私の隣の席に座った。






もしかして転校生?







漫画の世界じゃ


寝坊した主人公が食パン咥えながら急いで学校に向かっている途中



道端、曲がり角でイケメンな男の人とぶつかって、


一目惚れして、




学校着いたらイケメンの転校生入ってきて、





『あ、あんた、さっきのー!?!?』













という定番なくだりがあるけど、






まず私寝坊してないしぶつかってもないし、

転校生もう来てるし、






転校生が皆イケメンっていう訳じゃないよね。










とりあえず私は寝たフリを続けたまま時が流れるのを待った。











気づいた時にはHRが始まる5分前。




どうやら私は本当に寝てしまっていたらしい。







寝ぼけ眼になりながら体を起こすと、



隣が騒がしいのに気づいた。







隣を見ると大勢が誰かを囲んでいて、



わいわいきゃーきゃー言っている。





その囲まれている中心にはきっと転校生がいるのだろう。









私も見てみたいな…。





あわよくば転校生に気に入られて、そのまま恋に落ちちゃったりして〜♡





なんて、ありえないよね。








「ほら席つけー!」






チャイムが鳴り、先生が騒がしいクラスに一喝を入れる。






「えー、皆も知ってると思うが、

今日から皆と一緒に学ぶ仲間が増えた。
転校生、前に出て自己紹介しろ」



「はい」






隣に座っていた転校生は立ちあがり、前に行くと黒板に名前を書き出した。




見るからに長身、180cmはあるんじゃないかな?





髪は茶髪がかっていて、外に跳ねている。







後ろ姿の印象は上々。









転校生は名前を書き終えるとこっちを振り返った。






















イケメンだ…。







どストライク。








漫画の中の王子様が飛び出してきた感じ。










「“高嶺”って書いて、たかみねっていいます!
高嶺空です! 」






名前もかっこいい…。






見惚れているとバチッと目が合った。







「よろしくね! 」






まるで私に言ってるかのように、微笑んだ。






自己紹介を終えた転校生は先生の指示に従って自分の席、


私の隣の席に戻った。








「じゃあ、今日の日直…は中村だな!
転校生に学校の案内をしてくれ」







中村麗香(ナカムラレイカ)。




私の名前。






こんな私に、こんな上品な名前は似合わない。









「え、私が…!? 」


「じゃ、朝のHRは終わり!
皆、授業頑張れよー」







これは…本当に漫画の展開になりそうな予感。





私がそんなふわふわドキドキ味わっていいものなのか。






「中村さん?よろしく! 」


「よ、よろしく、お願いします…」




私がおどおどしていると転校生は手を引っ張り、強引に握手をした。






「ねーねー、中村さん、学校の案内私がやってもいいかな?」






クラスの女子では上位グループにいるような人。




ちょうど良かった、私も困ってたし。






「うん、いいよ」


「なんで?日直は中村さんでしょ?」





転校生!?今は余計なこと言わないでー!

誰に案内されようが何も変わらないから大丈夫だよ!!






「わ、私、まだ終わってない課題あるからっ」





なんてそんなの嘘だけど。



転校生は渋々了解して、他の人に案内をしてもらうことになった。
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