優しい音を奏でて…

挨拶

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1月2日(水)

ゆうくんからメッセージが届いた。

『明日、おじさんとおばさん、家にいる?
迎えに行った時、きちんと挨拶したいん
だけど…。』

『いいよ、わざわざ。
うちの両親もゆうくんの事はよく知ってるし。』


挨拶も何も、うちとゆうくんちは子供の頃から家族ぐるみの付き合い。
そんな状況で、『付き合ってます宣言』みたいなのは、私としてはとても気恥ずかしい。

『俺はコソコソ付き合うのは、嫌なの。
明日、挨拶するから、何時が都合がいいか
聞いといて。』


私は仕方なく、両親の所へ都合を聞きに行った。


「お父さん、明日、家にいる?」

「ああ、特に出かける予定はないが、何だ?」

テレビのお正月特番から、目を離す事なく答えた。

「明日、ゆうくんがマンションまで送って
くれるんだけど、迎えに来た時、お父さんと
お母さんに挨拶したいって。」

「……… 」

お父さんがゆっくり振り返った。
すると、そこに弟の律(りつ)が口を挟んだ。

「明日、ゆうにぃ来るの?
オレ、会いたい!
ねぇちゃん、10時半にして。
明日、涼(すず)と出かけるから、その前が
いい!」

涼ちゃんは、律の彼女…というか、婚約者。

「何で、あんたの都合に合わせるのよ?
まさかとは思うけど、涼ちゃんまで呼ぶ気
じゃないでしょうね?」

「呼ばねぇよ。
ゆうにぃ見て、万が一、取られたらやだもん。」

「はぁ………
あんたねぇ、子供までいるのに、涼ちゃん、
信じられないの?」

「………だって、ゆうにぃのかっこよさ、
半端ないじゃん。」

律だって、そこそこイケメンだとおもうんだけど、身内の欲目かな?

「はいはい。
じゃあ、明日、10時半にお待ちしてますって、
ゆうくんに伝えておいて。」

と母が話をまとめた。

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