ヴァンパイアの花嫁
「君はこの街で倒れていたんだ」


シェリルのフォークとナイフを持つ手が止まった。


「何も思い出さないか?」


倒れていた場所はこのリストランテから少し離れた石畳の上。


シェリルは眉根を寄せて黙り込んでしまった。


そして、少しして首を横に振る。


「早く思い出したいです。そうすればレオン様に迷惑がかからないのに……」


レオンの私室を使わせてもらって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


シェリルの申し訳ない気持ちはいつもレオンに伝わってくる。


レオンは口元に笑みを浮かべた。


いまだにベッドが一緒だが手を出すのも躊躇われている。


そもそもこの少女がその行為を知っているとは思えないが。





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