緋色の勇者、暁の聖女
 旅の途中、レイは度々立ち止まり景色を眺めていた。今思うとそれは、この世界にお別れを彼女なりにしていたのかもしれない。

 胸が、掴まれたみたいにぎゅっと痛い……

 いつかカナリが、旅を急かす僕に凄く怒った事があったっけ。あの時は何が何だか分からなかったけど。

 カナリが言った通り、僕は旅を急かしたりしちゃいけなかったんだ。だってそれは、レイの死を急かす事になるから。


 もう、ジャンさんの作戦にすがるしか無かった。絶対に成功させたいと、強く想う。


 レイがこのまま生きていられるように……


 もう一度レイを見ると、彼女はそんな事はとっくに乗り越えたような凛とした表情をしていた。

 僕はそんなレイが、改めて強いと感じた。
















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