緋色の勇者、暁の聖女
 薄暗い洞窟の牢獄は、時折地下水か何かの雫が降ってきて冷たい音をたてていた。訪れる者は僕たちを監視する兵士だけで、彼らは日に三度、食事を運んでくる時しか顔を見せない。

 空も見えないこの場所は、時間の感覚を麻痺させてゆく。


 あれから僕たちは、世界を治める大司祭グラファイトによって大罪人として投獄された。

 何時間も何日もずっと、移送牢に入れられ移動した。移動中は、外の景色は見られなかったから、ここが何処なのかわからない。

 分かるのは、寒いという事。

 洞窟の牢獄へ入れられる時、ガーディ教団の兵士がやっと教えてくれたのは、ここは動物が住むのも厳しい北の地にある、という事だけだった。

 同じように捕まったジャンさんは何処へ連れていかれたのだろうか。

 あの基地に非難していた人たちも、人数が多くて捕まりはしなかったけど、全員基地を出されたと聞いた。そして誰もいなくなった治安隊の基地は、ガーディ教団によって跡形もなく取り壊されてしまったそうだ。


 僕たちはそんなわずかな情報を教えられただけで、ずっとここに閉じこめられていた。

 初めのうちはなんとか逃げ出そうといろいろやってみたけど、それも無理だとわかった。今はあのカナリでさえ黙り込んでしまっている。

 牢獄の冷たい空気が、僕たちの希望さえ凍えさせていた。


 グラファイトは、一体何を考えているんだろう……


 兵器に付けていた聖剣オプトゥニールも、彼が砂漠から探し出して持って行った。だけど聖女のレイも僕と一緒にいるという事は、グラファイトはアエーシュマを倒そうとはしていないんだ。
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