緋色の勇者、暁の聖女
自分だけ安全な場所で、世界中のみんなが苦しむのを笑って見ているだけだ。
ジャンさんが前に言っていたけど、グラファイトは昔は誠実な優しい人だったらしい。災厄の時が来て、アエーシュマが現れるようになって、変わってしまったと……
アエーシュマがこの世界の全てを狂わせている。発展も生活も、人の心も。
これから僕たちは、どうなるんだろう……
みんな疲れた顔をして座り込んでしまっている。冷たい石の床は、心まで凍らせているようだった。
ここへ来て、何日目の朝だろう。今まで時間になるときっちり食事を運んでくる兵士が、今日に限ってなかなか姿を見せない。
「あ~もうっ! ご飯ぐらいしか楽しみがないのに! 遅い! 遅い! 遅~い!」
来る気配も感じられず、カナリは痺れを切らして牢の中を飢えたクマみたいにウロウロしている。
僕がそう言うとカナリは、クマって何? と言うのでクマの説明をした。
「黒くて毛だらけで、時々人や他の動物を襲って食べる猛獣。あと、ハチミツが好き」
とたんにカナリは、怒って頬を膨らませた。
「あたしはクマじゃな~い! もっと可愛らしいのに例えてよね!」
「可愛らしいのって?」
「だから、ゾンボとかゴンタタとか……」
「名前だけ聞くと、あんまり可愛らしそうじゃないね」
僕がそう答えると、黙って聞いていたレイとクレールがおかしそうに噴出した。
どうにも噛み合わない僕とカナリのやり取りがおもしろかったみたいだ。カナリはそんなみんなの様子に、ますます怒って頬を膨らませたが、僕もおかしくなって笑ってしまった。
ジャンさんが前に言っていたけど、グラファイトは昔は誠実な優しい人だったらしい。災厄の時が来て、アエーシュマが現れるようになって、変わってしまったと……
アエーシュマがこの世界の全てを狂わせている。発展も生活も、人の心も。
これから僕たちは、どうなるんだろう……
みんな疲れた顔をして座り込んでしまっている。冷たい石の床は、心まで凍らせているようだった。
ここへ来て、何日目の朝だろう。今まで時間になるときっちり食事を運んでくる兵士が、今日に限ってなかなか姿を見せない。
「あ~もうっ! ご飯ぐらいしか楽しみがないのに! 遅い! 遅い! 遅~い!」
来る気配も感じられず、カナリは痺れを切らして牢の中を飢えたクマみたいにウロウロしている。
僕がそう言うとカナリは、クマって何? と言うのでクマの説明をした。
「黒くて毛だらけで、時々人や他の動物を襲って食べる猛獣。あと、ハチミツが好き」
とたんにカナリは、怒って頬を膨らませた。
「あたしはクマじゃな~い! もっと可愛らしいのに例えてよね!」
「可愛らしいのって?」
「だから、ゾンボとかゴンタタとか……」
「名前だけ聞くと、あんまり可愛らしそうじゃないね」
僕がそう答えると、黙って聞いていたレイとクレールがおかしそうに噴出した。
どうにも噛み合わない僕とカナリのやり取りがおもしろかったみたいだ。カナリはそんなみんなの様子に、ますます怒って頬を膨らませたが、僕もおかしくなって笑ってしまった。