緋色の勇者、暁の聖女
「ありがとう、レイ――――そして、勇者ヒイロ。もう一度、私ができる事を考えてみたいと思います……彼のそばで」
ミュールさんは後ろでずっと控えていた男の一人に、指示を出した。何を言ったのか聞こえなかったけど、男は頷くと僕の目の前へ歩み出る。
そして背負っていたオプトゥニールを降ろし、差し出したのだ。
「その聖剣はヒイロにお返しします」
ミュールさんは僕にそう言った。
「私にはもう、必要の無いものです。それをどう使っても、私はあなた方を信じています」
この剣にはアエーシュマを倒せる力がある。そしてその力をどう使うのか、ミュールさんは僕たちを信じて託してくれた。
再び手に戻ったオプトゥニールは、やはり羽のように軽く手に馴染む。
だけど、様々な人の希望や期待、悲しみの分だけ、重くなっているような気もした。
◇