緋色の勇者、暁の聖女
 岩山の道を進んでいた。

 足下のかろうじて歩く場所の分かるような道は、ゴツゴツとした石がたくさんあり、すぐに足の裏が痛くなる。山肌に切り出したような岩が太陽の光を照り返し、その熱が僕の体力を削っていった。

 みんなもそれは同じみたいで、登っている途中で何度も休憩をとる事になった。いつもより多い休憩。僕はその度にホッとしている。

 だって、それだけレイが儀式をする時間が遅くなるから……

 レイの様子も、あの森の人の村を出てから少し変わった。元々カナリみたいに口数が多い方じゃないけど、岩山を登り始めて更に減った気がする。

 そして時折、何か考え込むみたいに立ち止まる。

 レイも……もしかしたらまだ迷っているのかもしれない。世界を救うとは分かっているけれど、死ぬのは誰だって怖い。


 崖に向かって岩が大きくせりだした場所でその日の何度目かの休憩をとると、丁度陽が暮れ始めた。今夜はそこで移動を中止する事になった。

 いつもの野宿みたいにそれぞれが準備をし、夕食も終わった。

 普段なら火を囲んで話をするけど、そんな雰囲気にはならなかった。やっぱりみんな疲れているみたいだし、それにじっと考え込んでしまっている。だからその夜はわりと早めに眠る事にした。

 夜の魔物の見張りはいつもみたいにクレールがやってくれると言ったが、彼も疲れが顔に出ている。僕は少し眠ってから交代をかってでた。

 疲れているのはみんな一緒だ。無理をするクレールを何とか説得し、見張りを交代して休ませる事に成功した。
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