緋色の勇者、暁の聖女
 僕たちは台座の前で、光の無くなったオプトゥニールを囲むように座っていた。さっきまであんなに光が溢れていた星の魔法石も、今は落ち着いたようにその光を弱めてしまった。

 僕の涙は、レイがずっと手を握ってくれた温もりで、やっと止める事が出来た。儀式をぶち壊してしまって、レイは悲しんでしまうかと思ったけど、彼女は何も言わなかった。

 少しだけ、ホッとしたように息を吐き、それだけだった。


「……これから、どうしようか」


 呟くようにレイは言った。

 それはただの相談の言葉ではなかった。彼女がそう言ったと言うことは、もう儀式はしないという事。

 生きる道を選択してくれたという事だった。


「――――やはり、ジャンさんを助けた方がいいかもしれない」


 クレールが静かに言った。

 僕もそう思う。オプトゥニールは完全ではないけれど力を持っている。その力をどう使ったらいいのかは、僕たちよりもきっとジャンさんの方が詳しく知っているはずだ。

 一度は負けたけれど、ジャンさんは魔法石の事や聖剣の事、アエーシュマの事を調べていたのだから。

 ジャンさんは今、ガーディ教団本部でグラファイトに捕らえられている。とにかく僕たちは、そこを目指す事にした。


 行き先が決まり立ち上がろうとした瞬間、高らかな笑い声が響いてきた。僕たちの誰の声でもない、あの声は――――




「やはり、あなた方には無理だったようですね、残念です」




 ――――グラファイト!

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