緋色の勇者、暁の聖女


 ――――あなたの中には、光が見える。

 希望。

 それがあなたの力……


 ふっと、ミュールさんの声が聞こえた気がした。気のせいかもしれないけど……でも、僕の頭の中にはまだ、昨夜のミュールさんの声がハッキリと残っている。

 僕はもう一度深呼吸をしてから、ゆっくりとみんなの待つ長老様の家へ戻った。




 部屋へ入ると、みんなが心配そうな表情で僕を待っていた。一人ひとりのその顔をしっかりと見つめ返し、僕は決心を言葉に変える。




「みんなでグラファイトを倒そう!」




「緋絽くん、いいの?!」


 レイが驚いて僕にまた問う。


「いいんだ。この世界に平和を取り戻す為に、僕は来たんだから」


 カナリが心配そうに聞いてくる。


「でも! ヒイロ、帰れなくなっちゃうんだよ?!」

「あきらめないで探せば、帰る方法はきっとあるよ」


 クレールは僕の目を見つめ返した。


「決めたんだな?」

「うん、僕はもう決めたんだ!」


 本当に、もう僕は帰れないかもしれない。その事に、後悔もするかもしれない。

 だけど、みんなを見捨てるなんて出来ない。仲間を裏切るなんてしたくない。

 だから……

 みんなでグラファイトを倒して、平和を取り戻して、それから僕は探そうと思う。

 ――――帰る方法を。

 何年かかるか分からない。見つからないかもしれない。

 でも、あきらめないって決めた。


 それが僕の答えだった。
















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