緋色の勇者、暁の聖女
 手を開くと、光と共に石の欠片が粒子状になって、キラキラと輝きながら上へ昇る。そしてそれに呼応するかのように、グラファイトの体も輝き始め、同じようにキラキラとした粒子になりながらミュールさんの石と一緒に空へ昇ってゆく。

 グラファイトとミュールさんの輝きは昇りながら混じりあい、やがては部屋の天井へ吸い込まれるように消えた。


「……最後まで見せ付けやがって」


 ジャンさんはもう既に消えてしまった二人を、まだじっと見上げながらそんな事を呟く。顔は笑っていたが、悲しそうに……


 しばらくしてこちらを振り返ったジャンさんの表情は、明るかった。だけど、彼の頬に一筋の涙の痕。

それが全ての終わりを告げていた。
















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