緋色の勇者、暁の聖女
 街にいたガーディ教団の兵士たちは、全てアンラマンユに心を操られていた。アンラマンユが消えてしまうと、兵士たちはたった今目覚めたかのように正気を取り戻した。

 アエーシュマは、アンラマンユが消滅したのと同時に溶けるように崩れ去ってしまったようだ。そして、中からは大量の魔法石が溢れ出して街の半分を埋め尽くした。アエーシュマは魔法石をたくさん飲み込んでいたが、どうやらそれは消化されずにいたらしかった。

 アンラマンユによって世界は混乱していた。だけどそのアンラマンユは、人の負の心で生まれた悪魔だった。

 そしてまた、人によってアンラマンユもアエーシュマも消滅した。


 決して、忘れてはいけない。

 全ては人の心が生み出した悪魔だったと言う事を。それと、その犠牲になった人たちの事を……




 ガーディ教団本部があった街は、治安隊が取り仕切る事になった。今までアエーシュマから身を隠していた人たちを、積極的に受け入れるように改善された。

 もちろん、その治安隊を統括するのはジャンさんだ。

 本人は「そんな面倒くせえ事はやりたくねえ」とぼやいていたけど、ジャンさんの性格はみんなよく知っている。この世界を再建するのに、きっと最高の指導者になるだろう。

 街の外れの見晴らしのいい場所に、ジャンさんはグラファイトとミュールさんの墓石を建てた。中には遺骨も何もないけれど、ジャンさんは毎日花を供える。

 幼馴染みとの再会を喜ぶように。
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