緋色の勇者、暁の聖女
 そして街が再建に向けて動き出したのを確認して、僕たちはそれぞれの場所へ帰る事になった。

 クレールは、ジャンさんと一緒に治安隊としてこの街で働く事に。元々、この街の地下で暮らしていた。これからは、みんなで太陽の下で暮らせるんだ。

 カナリとレイは、自分たちの暮らしていた聖堂のあるあの街へ帰る事に。今回の事で、ガーディ教団の力は殆ど無くなってしまったけど、ずっと自分が暮らしてきた場所だから。

 そして僕は……



「緋絽くん。私たちと一緒に帰ろう? 街のみんなが、緋絽くんを待っていてくれてる」

「そうだよヒイロ! 一緒に帰ろ!」


 レイとカナリがそう言ってくれた。

 グラファイトがいない今、僕は元の世界には帰れない。帰る方法を探そうとは思ってるけど、その間住む場所をまず探さなければいけなかった。

 ジャンさんやクレールが治安隊に誘ってくれた。この世界を救った勇者が治安隊を手伝ってくれたら、きっと復興も捗ると。

 だけど……僕はレイとカナリの申し出を受ける事にした。もうこの世界には、勇者なんて必要無い。それに、あの街から僕は勇者として旅立ったんだ。

 そこに帰れば何かヒントが見つかるかもしれない。オプトゥニールもまだ返してないし。

 街に帰るのを、クレールも同行してくれると言った。まだ肩の傷は癒えてはいなかったけど、どうしても送り届けると言って譲らなかった。


「聖女と勇者の護衛は、最後まで俺がやる」


 クレールはそう言って微笑んだ。全てが終わり、クレールもだいぶ表情が柔らかくなったようだった。
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