緋色の勇者、暁の聖女
「――――緋絽くん!」
呼び止める声と一緒に、レイが僕の手を引く。振り返ると、涙で頬を濡らした彼女の顔がそこにあった。
「緋絽くん、また、逢えるよね……」
レイの瞳はキラキラと光を反射させ、僕の目を捉えていた。
「うん、信じていれば、きっと……」
それは本当かどうかは僕には分からない。だけど、信じたい。
きっとまた、逢えるって。
「ありがとう、緋絽くん」
「レイ……」
黒い霧が僕を引き込み始めた。もうすぐこの入り口も閉まるのだろう。
レイと繋いでいる手が、どんどん離れてゆく。
「緋絽くん!」
レイがもう一度僕の名前を呼んだ瞬間、繋いでいた手が離れ、僕はそのままボーダーへ引き込まれた。
最後に見えたのは涙で濡れたレイの顔と、その後ろの砂浜で手を振っているカナリとクレールの姿だった。
◇