緋色の勇者、暁の聖女
 レイは僕の分からない言葉で、難しい呪文のような祈りを太陽の魔法石に捧げた。そして彼女に言われ、僕がオプトゥニールをそれに向かって高く掲げると、剣と石が共鳴しはじめた。

 持っている手にビリビリと痺れるくらい、オプトゥニールと太陽の魔法石の力が感じられる。

 やがて太陽の魔法石の光が強くなり、オプトゥニールはそれを目指すように浮上して僕の手から離れる。光と剣が交わった瞬間、辺りは一面強い閃光に包まれた。

 目を開けていられない程の強い光はやがて治まり、ゆらゆらと揺れながら落ちてきたオプトゥニールは、また僕の手に戻った。

 光のせいで少し熱を持ったオプトゥニールの柄の部分には、太陽の魔法石と同じ輝きを持った石がはめ込まれていた。


「――――出来たね。これでオプトゥニールは君の剣になったんだよ」


 全てが終わると、レイが嬉しそうに笑って言った。


「僕の、剣に……?」


 うなずくレイを見ながら、オプトゥニールを握ってみた。

 柄の部分は手によく馴染み、今まで感じていた重さがまるで羽のように軽くなっていた。そして何より、剣から力が体に注ぎ込んでくるみたいで、僕は強くなったような気持ちになる。


 これが、聖剣の力?


「ね、ね! 何か変わった? あたしにも見せてよ!」


 カナリが好奇心旺盛に言ってくるので、仕方なく剣を渡すと、彼女は持った瞬間その重さに尻餅をついた。


「おっも~い! 何これ?! ヒイロはあんなに軽々持ってたのに!」


 カナリがよろよろと剣を持ち上げながらそう言ったので、レイの言った『僕の剣になった』という言葉の意味が分かった気がした。
















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