天罰
泣きじゃくる私を見て悟くんはフッと笑うと
「桃さん、子供みたいだなぁー」と言って
私を優しく抱擁した。

彼の広い胸が温かくて
彼の優しさに包まれて私はまた涙が溢れた。

「桃さん、外冷えてきましたからそろそろホテルに向かいましょう」

「うん、そうね。でも今ひどい顔してるから恥ずかしい・・・」

「大丈夫ですよ?」と言って彼が私の顔を覗き込もうとしたので私は
「ダメ!」と言って両手で顔を隠した。

「はは、見ませんよ」と言って彼は笑うと
「ホント、桃さんって可愛いですね。マジやばいっす」と言い出した。

「何がやばいのよ?」と拗ねたように聞き返すと
「ますます好きになってやばいって意味です」と真剣な表情で彼が答えた。

その言葉に私の胸がキュンとなった。

「私も・・・」

「え?」

「悟くんのことが好きすぎてやばい・・・」とボソッと呟くと
彼は「おおお!」と歓喜の声を上げてまた私を強く抱きしめた。

「桃さん大好きです!マジ幸せです!」

彼の喜びが伝わって今度は切なさで涙が出そうになった。
幸せって言葉がこんなに良心の呵責に苛まれる言葉だったなんて知りもしなかった。
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